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エッセーの壷9・徳之島の畑相

今年最後のエッセーです。
お暇がある方は、読んでみてくださいませ。
画面が大きくならないので、生原稿を下に添付しました。
エッセーの壷9・徳之島の畑相





エッセーの壷 9
赤土賛歌・徳之島の畑相               佐竹京子

 徳之島に行くたび泊めてもらえる家がある。伊仙町伊仙のFさんのお宅だ。彼女はよもぎ餅を作って卸したり発送したりといつも忙しい。楽しみは朝、海に向かって散歩をすること。
 徳之島の風景は伸び伸びとしている。とくに亀津から面縄、伊仙、犬田布岬など太平洋に面する風景は素晴らしい。視界いっぱいに入るきび畑と海原の広がりが嬉しい。思わず両手をひろげ風を受けて走りだしたい衝動にかられる。もしも飛べるものならそのままハングライダーのようにふわっと上空を旋廻してみたいほどだ。
遅い夜明けが海原にたなびく雲間から広がっていた。曙色の雲が淡いオレンジに変化して朝日のなかに溶けていく。払暁のひとときである。
それにしても畑がきれいだ。きび畑の間に耕された赤土色の畑にはジャガイモの緑葉が整然と揺れていた。そして早くも畑に出ている人がいる。挨拶を交わす。
海の際まで降りて帰り道になると、すっかり空は明るくなって農道には何台もの車が行き交う。そのたびに挨拶だ。「どこからね~」「名瀬からよ~」「そうね~」という具合だ。畑の中を朝から白髪の女が歩いているのは珍しいのだろう。老夫婦が車を止めて話しかけてくる。表情が活き活きしている。身体を使って労働をしている人の健康な顔である。
徳之島2泊3日は久しぶりである。1泊目は下久志の「ときわや」系列の「きむきゅら」に泊まった。翌日は石原の線刻画とWさんの焼き物工房を訪ね、そこから島の中腹を走る農道を通って亀津から面縄のYさんのコーヒー園と、登り窯のSさんの工房を訪ねた。忙しいのにYさんがアッシー君になってくれた。
農道は井之川岳の周辺を回るようだ。水平線に与路・請の島影がみえる。きびの葉づれがざわざわと風に戯れている。海の際まで開墾されたきび畑やじゃがいも畑が防風林に守られながらここも整然として美しい。
友人のFさんに聞くと、もう畑にするところないぐらいに開墾されているはずという。「徳之島の人ってよく働くよね~」というと「エラブほどじゃないよ」という。
徳之島で感じたことは、何よりも畑がきれいなこと。草茫々の休耕地など見当たらないし、畑に出て働いている人の数が多いこと。みんな活き活きしていて大概の人は大金小金をもっていそうな雰囲気だ。奄美大島とはちょっと違う。なぜ?
徳之島がすごいのは行政と民間が一体になっていることだろう。昨年の普天間基地移設問題で反対運動が一気に盛り上がった背景には、「農業の島」という位置づけがしっかりなされていたからだと思う。もし奄美大島に移設問題がきたらどうだったのだろう。少数の反対派と多勢の賛成派で押し切られていたのではないだろうか。金が落ちれば経済が回る、だから米軍でも自衛隊でもいらっしゃいと・・・
大島紬の低迷に加え農業生産の少ない奄美大島と、日夜生産にいそしんでいる徳之島や沖永良部島との差は大きい。徳之島はすでに一次産業から二次産業の加工品へとあれこれ取り組んでいるが、いつまでたっても荒れ放題の休耕地を抱えている奄美大島の立ち遅れはやるせないほどだ。結局島としてのビジョンが立てられないできた行政トップの才覚の問題だ。自立のためのビジョンよりも、我が身の安泰ばかり図ってきた長きにわたる奄美市の体質は、もはや歯止めの利かないところまで来ている。年々、生活保護世帯が増えているのが何よりの証拠だし、人口減は加速するばかりだ。生産性のない島にどんなに補助金をつぎ込んでも活力は生まれない。
種を蒔き、育て、収穫する喜びと苦労を取り戻すしか奄美大島が生き延びる道がないような気がする。

                                      ブティック「さねんばな」経営




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2011年12月29日│Comments(0)日記
Posted by 佐竹 京子
 
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